怪獣と戦った航空機たち   
CCVは怪獣退治の夢を見るか!?  
 1984年、伊豆諸島に現れたゴジラは関東圏に上陸する可能性がきわめて高いと判断された。
 自衛隊の戦力が関東周辺にかき集められることになり、航空自衛隊はF-1 CCVを投入することとした。
 ゴジラが口腔より放射する熱線を回避するため、高度な機動性が必要と判断されたためである。
 当機は通常型のF-1支援戦闘機から実験的に数機の改造が進められ、三沢基地にて試験運用が行われていた。
 
   CCV化のため機体下に動翼が追加されたため、胴体下への増槽搭載は不可能であった。兵装としては、破壊力から空対艦ASM-1が最適とされたが、このミサイルの懸架パイロンは翼下増槽と同一であった。そのため、ミサイルを搭載すると、増槽を装備することができず、戦闘行動半径は著しく制限されることとなった。
 反復攻撃用として、残る二つのパイロンには対地ロケット・ランチャーを装備することとなった。
 F-1 CCV部隊はゴジラ上陸に備え、百里基地に移動、待機した。
 
 
   実際の出撃においては、ロケット・ランチャーによる反復攻撃は非現実的として、代わりに翼端に赤外線誘導式の空対空ミサイルを装備した。
 熱線放射前にゴジラの口腔部近辺はきわめて高温になり、ミサイルのセンサーはその温度に反応する。
 つまり、ミサイルが反応したらとき、ゴジラは自機に向けて、熱線発射態勢にあるのだ。
 「ミサイルが反応したら、即、回避」が鉄則となった。
 当初、熱線射程外からASM-1を発射するはずであったが、誘導レーダーがゴジラをロックオンすることができなかったため、必中距離まで接近しての発射となった。
 空対空ミサイルのセンサーは有効に働き、接敵時に被弾した機体はなかったが、発射後の回避行動時に2機が撃墜されてしまった。
 結局、1984年のゴジラ襲来では、撃退はならず、三原山に封じ込める形で終結した。
 このときの戦訓を元に、防衛省、そして、Gフォースは対ゴジラ戦術を練ることになる。
 対ゴジラ戦闘の先鋒となるのは、航空戦力であるが、搭載火力においては、艦艇やメーサー搭載車両にはおよばないため、足が遅いこれらの兵器群が配置につくまでの足止めが主任務となる。
 対ゴジラ戦闘の任が、Gフォースに集約され、その主戦力は怪獣型兵器となった後も同様である。
 Gフォースでは、CCV化により機動性を向上したF-16を航空戦力として採用した。
   ゴジラを対艦誘導弾のレーダーでロックオンすることは困難であるので、主兵装は70mmロケット弾とした。翼端の空対空ミサイルに見えるものは、熱線予期のための赤外線センサーポッドである。
 1984年の東京襲撃後、数度にわたる戦闘により、「ゴジラの首は上下方向に動きにくい」事が判明した。
 攻撃後、上方に離脱すれば、ゴジラの首の動きは航空機に追従できず、熱線があたりにくくなる。さらにゴジラは攻撃した機体を追い、上を向くので、一般的に動物の急所であるのど元が無防備にさらされるのだ。
   これを応用し、二機のF-16でトレイル編隊を組み、一番機が攻撃後、上方に離脱。さらされたのど元に対して、二番機が攻撃を加えるという戦法が案出された。
 一部の隊員はこの戦法を「フォーメーション・ヤマト」と称した。
 打撃力を上げるために、三機で攻撃する案もあり、当然のごとく「ジェット・ストリーム・アタック」と称されたが、三番機が被弾する可能性が高いため、採用はされなかった。
 「フォーメーション・ヤマト」などの戦法を習熟する訓練を続けるうち、小型でも高速演算可能なAI(人工知能)とも言うべきコンピュータが搭載可能となった。もちろん、怪獣型兵器開発のスピンオフである。
 Gフォースの戦力中、もっとも消耗率が高いと推測される航空戦力が真っ先に人工知能による無人化がなされた。
 とはいえ、「フォーメーション・ヤマト」のような高度な操縦技術を要する戦法については、パイロットが自ら操縦し、AIに教え込む必要があるため、コクピットは残されている。
 さて、怪獣型兵器メカゴジラの敗退によって、F-16 CCV部隊の初出撃は地上部隊との連携によるゴジラの進行阻止となったが、AIの熟成も十分ではない状態での襲撃となったため、せっかくの「フォーメーション・ヤマト」も使用の機会がなく、全機、消耗してしまった。
 電磁波をコントロールして攻撃してくるスペースゴジラに対しては、確実に機体が機能不全を起こすため、出撃が見送られた。
 CCV機による怪獣撃退は夢をみるどことか、夢のまた夢のようである。

 航宙ファン 「CCVは怪獣退治の夢をみるか」より
 
 作品解題です。

 COVID-19騒動のため、せっかく夏期の長期休暇をいただいても身動きがとれません、というわけで、以前から暖めていた、ゴジラ映画に登場した架空機を作成することにしました。

 まずは「'84 ゴジラ」からF-1 CCV。ベースはハセガワの1/72 F-1です。F-1自体がT-2ベースの機体ですので、T-2 CCV実験機が実在しているので、F-1のCCV化もありえない話ではない、と思ったのですが・・・
 
 F-16 CCVはタミヤの1/72 F-16Cがベースです。こちらはF-16 CCVの資料が用意できなかったので、適当に小翼を作ってつけました。
 のど元攻撃「フォーメーション・ヤマト」はウルトラマン80から、「ジェット・ストリーム・アタック」はいわずもがな。
 
 さて、CCVは実験機として、いろんな国が作ったみたいですが、結局CCVを売りにした機体は世にでなかったみたいです。実際にはフライ・バイ・ワイヤの類いの制御システムにはいかされているのでしょうが、世の流れは「ステルス」になってしまいましたからね。